ぎんゆうしじんになりたい男のブログ

キングコングバンディと猪木のボディスラムマッチみたいになってっけどよぉ by 上田晋也(くりいむしちゅー)

VOL.3 レンブラント

 レンブラントが生きていた時代になると、アーティストのパトロン及びクライアントの座は、教会から近代社会で成功した豪商たちに渡った。
 豪商たちはカトリック教会とは異なり、聖書の名場面ではなく成功者としての自分自身を描かせたポートレイトをアーティストに依頼した。
 かつてあったであろうイエス=キリストの時代の光景ではなく、当世風に聖書を表現することもなかった。オランダ絵画は、ただ現実の人、物、事を描いた。
 豪商たちは、ビジョンとしてオーディエンスに公開される絵画ではなく、個人が所有し、室内を飾るものとしての絵画を必要とした。個人の所有物であるが故に、やがて絵画は売買の対象になってゆく。
 S・シャーマは、レンブラントの凋落の原因の一つとして、クライアントが望むものではなくアーティスト自身が見せたいものを描いたことを挙げている。
 画家が職業である以上、クライアントが望んだイメージをアーティストは描くべきである。近代社会に突入し、絵画の依頼者が絶対的な権力者から、画家と同じ民間人となり。画家も定期的に金銭的な収入を得ることができるようになった。
 社会システムの変化が画家の意識を変化させ、自分のイメージを絵画に託したいと思わせるようになったのではないだろうか。
 自分の描きたいイメージを優先するという行為は、職業画家レンブラントがクライアントの依頼に応えられないという評価につながり、やがて彼自身の経済的な困窮につながってゆく。
 レンブラントの時代から、自分自身が描いたイメージをビジョンとしてオーディエンスに公開するという、モダンアートに通ずる精神性がはじまっていたのだろう。