ぎんゆうしじんになりたい男のブログ

キングコングバンディと猪木のボディスラムマッチみたいになってっけどよぉ by 上田晋也(くりいむしちゅー)

VOL.8 ロスコ

 画家は、自分の意図を託すべきかたちを描き、もっとも効果的な画面を構成する。
 例えば、自分のおもいを託すべきかたちが見当たらない画家がいる。ある時、その画家は自分のおもいを託すべきかたちを探すのをやめて、かたちの定まらないかたちに自分の意図を託すことにした。
 その不完全なかたちを描いた絵画は抽象画と呼ばれた。
 ロスコは不完全なかたちを、見るものが特定できないなにかをキャンバスに描いた。
 不完全なかたちのモチーフは、鑑賞した人に、人間の名付ける前の感情を呼び起こす効果をもたらした。
 一般人には理解しがたかったが、クリティックによって意味を与えられたロスコの絵画はミュージアムの支持を受け、コレクターたちも収集に乗りだすことになった。
 ロスコはアーティストとしてのアート業界から認められることになった。
 現代のアーティストは、クライアントからの依頼もなく、パトロンからの支援もない。ただ、自分自身が伝えたいビジョンをオーディエンスに公開して行くことになった。
 アーティストが製作したビジョンはクリティックによって意味を与えられることで、アート業界で売買の対象として取引される作品となる。
 作品がどんなに高額で取引されても、製作者のアーティストには一銭も入ることはない。


 一般人は、アートに興味なんてない。
 アートに世界を変える力はない。
 アートはクリティックによって意味を与えられて高額で取引されているだけである。
 現行の社会システムで成功したものは、その成功をできるだけ享受しようとする。
 成功できなかったものは社会システムの打倒を求めて、自分を新しい成功者の枠に入れようとする。
 あきらめたものは生きるための金銭を稼ぐために働かされ続けるだけだろう。
 法律の範囲内であれば何をしてもいいし、権力者はいつも証拠不十分で捕まることはない。
 資本利益至上主義のなかで、どうしてアートに世界が変えられるというのか。
 ただ、アートは鑑賞した人の心に忘れられない印象を残すことはできる。